資格取得



多くのビジネスパーソンが何らかの資格を保有しています。実際に、2008年度にリクルートエージェントにご登録された方のうち3名に2名以上の方が何らかの資格をお持ちでした。また、資格取得の動機が「転職活動を有利にするため」という方も多いようです。

この「資格取得が転職に有利」とは、いったい、どういうことを指すのでしょうか。私たちは「資格は応募できる求人を増やすのかどうか」と「資格を生かせる求人に応募したときに、内定を得やすいか」という観点から検証しています。

どの資格を持っていると、応募できる求人が多いのか。リクルートエージェントに寄せられた求人から集計しました(図参照)。

図は、リクルートエージェントに寄せられた求人の中で、企業が応募者に求める資格のトップ10です。
トップ3に入った資格を求める求人が他を圧倒していることが、わかります。ただし、この3つの資格が上位にある理由は、それぞれ異なります。

日商簿記2級は経理求人を中心に求められており、企業は経理業務に関する基礎理解を測る物差しとして見ています。

1級建築士、宅地建物取引主任者(以下宅建)は、それぞれ該当の業務を遂行する上で必要と法令で定められています。こうしたことから、企業が求職者に求める資格は「基礎理解を示す資格」と「業務遂行上必要な資格」の2種類であることがわかります。

次に「企業の求める資格を持っていると、応募できる求人がどれくらい増えるのか」を検証しましょう。

右図は、前ページで挙げた資格を求める求人がどれくらいの割合で存在するのかを集計したものです。
トップ10の資格を求める求人は、全求人の1%に留まっており、トップ10の資格を保有していなくとも99%の求人に応募できるということになります。

さらに、求人件数トップの日商簿記2級でも、全経理求人の約7%に留まっており、日商簿記2級を保有していなくとも93%の求人に応募できるのです(図3参照)。

資格を保有していても、応募できる求人が大幅には増えないことがわかります。

資格を生かせる求人に応募したときに、内定を得やすいかどうかは、資格保有者1人あたりどれくらいの求人があるのか=求人倍率から検証することが可能です。各資格ごとに求人倍率がどれくらい高いのか、検証していくことにしましょう。


図は、2008年度にリクルートエージェントに寄せられた求人と登録された求職者の数から、資格ごとに算出した求人倍率です。
公認会計士の求人件数は4位であるものの、求職者が少なく求人倍率5.1倍と求職者有利な状態です。一方で、求人件数トップの日商簿記2級、3位の宅建は、求職者も非常に多く求人倍率は0.3倍程度と、1件の求人を3人で競い合う厳しい状態です。
全体的には、トップ10資格のうち7資格が求人倍率1倍を割っており、競争が激しい状態です。こうした事実から、一部例外があるものの、資格を保有していても難無く内定を得られるわけではない、ということがわかります。
それでは、転職活動において資格は全く生かせないのでしょうか? キャリアアドバイザーに、転職活動における資格の意味とアピール方法を聞いてみました。


●資格は補足。資格自慢は厳禁。
大前提として、転職活動における主役は資格ではなく経験です。資格はあくまで引き立て役。企業は資格があるというだけで業務を遂行できるとは思っていません。なぜなら、ほとんどの資格が経験を示すものではなく、知識を示すものだからです。逆に言うと、知識を示すには資格は有効ということです。

<書類選考では、応募求人に生かせる資格のみを履歴書に記載>
履歴書に資格欄があるため、取得した資格はすべて書きたくなりますが、応募求人に関係ない資格は基本的に書くべきではありません。企業は関係ない資格を見ると知識を自慢されているように感じることもあります。そうなると、資格はむしろマイナスの効果を発揮してしまいます。

<面接では資格を経験・能力の補足としてアピール>
企業は資格自体を求めているわけではないので、資格を持っていることをアピールしても効果はありません。代わりに、具体的な経験や行動により説得力を持たせるため、資格で補足しましょう。

「以前の職場で英語は業務上使用していたので自信があります」と伝えるよりも、「以前の職場で英語は業務上使用しており、TOEICRスコア850点も持っているため、自信があります」と伝えた方が、英語能力に説得力が増します。

資格さえあれば転職活動が上手くいくというわけではありません。しかし、アピールの仕方次第では大きな武器にもなります。企業が本当に期待していることを意識して選考に臨むことが重要です。

※この記事は2011年02月に取材・掲載した記事です