フィンランド・オーロラ見物日記

その2

杉浦 久也 さん

3月6日(水)晴 朝マイナス16℃ 昼マイナス8℃ 夜中マイナス25

 8時ころ起床。カメラを持って外へ出る。近隣の雪景色を撮る。次いで、数百メートル離れたところにある
オーナーの家へ行った。家の近くまで来ると、二人の男が重機を使い道の除雪をしていた。そのうちの一人がオーナーのヴェーサであった。

 以下の質問や要望を伝えた。

1) 両替のできる銀行が近くにあるか。

答え:40キロ離れた町にしかない。

2) 人工の照明がオーロラ撮影に邪魔になる。何とかならないか。

答え:何ともならない。雲が無ければ、照明の害は減少するはずだ。

3) 雪の上を歩いた後、玄関に入ると滑りやすい。敷物を貸してほしい。

答え:承知した。後で届ける。

4) 昨夜暖炉で薪が炊かれていた。暖房のために常時薪を炊かねばならないか。

答え:主たる暖房は電気による床暖房である。暖炉は雰囲気づくりのためである。

            われわれが最初に泊ったコテージ(右側半分をわれわれが使用)

 帰途、スーパーに寄り食糧を調達する。思いつくままカート(日本のカートの3倍くらいの大きさがある)に放り込んだら、大きなビニール袋2杯分になってしまい、コテージまで持って帰るのに苦労した。

 朝食兼昼食:パン、チーズ、ハム、バナナ、牛乳、コーヒー、オレンジ

 帽子と手袋が居間のソファの上に残っていた。たぶん、昨夜ヴェーサが忘れて行ったに違いない。届ける途中で、彼の運転する車に出会う。忘れ物を返しながら、サウナの使用法を尋ねた。コテージまで来て、実際にスイッチを動かして、加熱する方法を教えてくれた。

 結氷したアカスロンポロの湖面へ行ってみる。広さは1平方キロ弱と聴いているが、ずいぶん広い感じがする。色とりどりのウェアーを着た老若男女がクロスカントリー・スキーを楽しんでいる。遥か南にはなだらかなお椀型のユッラス(Yllas)山(718メートル)が真っ白な姿を見せている。スキーのメッカである。

                  ユッラス山(スキー場として人気がある)

 湖畔で小柄な女性が写真を撮っていた。日本人だろうと思い、「こんにちは!」と声をかける。成田在住の娘さんだった。数日間の日程で当地を訪れ、三日後には日本に戻るとのことだった。

 私は一旦部屋に戻り、カメラを携え再び湖面へ出て軽快に滑走するスキーヤーたちを撮った。

 家内と再びスーパーへ買い物に行き、私が調達し忘れた品を補った。砂糖売り場が分からず、ある男性客に尋ねると一緒に探してくれた。念のためにフィンランド語で砂糖はどのように綴るのか教えてほしいと言うと「sokeri」との返事。発音はローマ字読みで「ソケリ」だ。Sokeriと書かれた看板が目に入った。家内の方が先に砂糖売場に来ていた。別の女性客が教えてくれたのだそうだ。ここでも親切な人たちに巡り合えた。もう一つ感心したことは、一般フィンランド人の英語力だ。初等中等教育で外国語に力を入れているとは聞いていたが、町の人々に英語で話しかけてみて、それを実感した。

 家内は数日後われわれに合流することになっている孫娘沙弥のためにと、あれもこれもと買い漁っている。大きなフライパンまで買ったのにはあきれた。帰りは昨夜下車して途方に暮れていたバス停を回る道を通った。コテージからずいぶん離れていることに驚いた。助けなしにはとてもたどり着けなかっただろう。

 さて、われわれ老夫婦のオーロラ撮影旅行中の生活は昼夜が逆転する。夜行性動物さながらに、夜目を皿にしてオーロラを探し求め、昼間は1-2時間の散歩のほかは寝て過ごす。食事は遅い朝食と早い夕食の2食が原則だ。朝食は主に私が担当し、夕食は家内に任せた。

 午後1時ころ初めてサウナに入る。一時間くらい前にスイッチを入れておくと、サウナ室内の温度が80℃くらいになっている。温度計の目盛は最高140℃まで刻んである。部屋の片隅に豆腐くらいの大きさの石ころが四角の金属容器に積み上げられている。柄杓で水を石の上にかけると、「しゅっ」という音と共に猛烈な熱気が部屋に立ち込める。頭の皮膚が焼けそうだ。辛抱できなくなり、隣のシャワー室でぬるま湯を浴び、汗を流す。サウナのそう快感は病み付きになりそうだ。



                        湖面を滑るスキーヤーたち



                     赤ん坊を引っ張りながら滑る若い母親

                 

                           サウナ部屋の内部



                        最寄りのスーパー

 16時過ぎ、ヴェーサを訪ねる。パソコンを使わせてくれと頼むと、書斎に通され自由に使ってよい、と言う。キーボードの配置がフィンランド語仕様になっていて、慣れるまで少々時間がかかった。沙弥宛てに家内からの伝言をローマ字で打ち、送信する。帰りがけに、ヴェーサの妻マリヤに紹介された。さわやかな笑顔の女性だ。

 スーパーでは、ビールを買うことができるが、ワインやウィスキーなどの酒類は売られていない。それらは同じ建物の中にある酒類専門店でないと、買えない仕組みになっている。好物のスコッチウィスキーを買って帰る。

 夕食:鶏の骨付きもも肉のソテー。早速今日買ったばかりのフライパンが役立つ。野菜サラダに黒パン。私はスコッチの湯割りを2杯空け、上機嫌である。

 食後しばらく仮眠。

 23時ころ目を覚ますと、ちょうど家内がオーロラを見つけ、カメラを持って出て行くところだった。私も後に続こうとするのだが、防寒着をつけるのに手間取り、オーロラの活発な動きを見逃してしまった。残念。



                           3月6日23:30ころ

今夜のオーロラは地平線近くで弱弱しく現れ、やがて消えた。午前零時ころコテージに戻り就寝。



                                                       続 く


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