極北トロムソ旅日記


            その13    杉 浦  久 也  さん

3月18日(水)曇り、夜雨、5℃/6℃

オーロラの記録的な活動に、この分野の研究の旗頭であるアラスカ大学地球物理研究所が発表する「オーロラ予報」がパンク状態になったらしく、接続できなくなってしまった。夜が明けると申し訳程度にオーロラ楕円予報だけ公開した。こんなことは珍しい。その断り書きはこうだ。

接続要求が過大となり、オーロラ予報は現在のところこのようなフォーマットでしか、ご提供できません。今夜のオーロラ観測のお役に立てば、と思います。

            2015年3月18日のオーロラ予報



        レベル3 中程度Moderate: 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9

予報:オーロラ活動は中程度。天候が良ければ中程度のオーロラが、トロムソ(ノルウェー)、レイキャヴィック(アイスランド)の真上に、またスンドヴァル(スウェーデン)、アルハンゲリスク(ロシア)では地平線上に見えるでしょう。

さて昨夜来の我が家の嵐は、まだ収まりそうにない。小生、打開策はないものか、と寝ながら考えた。一つ思い浮かんだのは、長距離バスを使ってアルタへ行き、2−3泊して来ることだ。必ずオーロラが見えるという保証はないが、多少の気分転換になるかもしれない。夜明けを待って、おそるおそるこの提案を家内に話した。思いのほかすんなりと、同意が得られた。

朝食後さっそくフロントのアンジェリータおばさんに話すと、すぐさま電話でバスの情報収集、ホテルの予約と、てきぱき処理してくれた。その手際のよさに感心した。

余談だが、彼女は今朝、黒のTシャツ姿で執務していた。その太くて白い二の腕に彫られた見事なタトゥー(刺青)に目を奪われた。唐草模様風の図柄だった。

彼女のおかげで、来る3月20日、21日、22日、アルタのスカンディック・ホテルを予約した。あとはアルタでの好天を祈るのみ。



トロムソからアルタまでは、何キロあるか正確には知らない。いずれにしても途中2回フェリーでフィヨルドを渡り、長距離バスで延々6時間半走るのだから、300キロはあるだろう。明日に備え荷造りをしなければならない。家内の方はすでに準備を終え「今すぐにでも出かけられるヮ」、という雰囲気だ。

今日は散策もせず、部屋に引きこもったまま過ごした。
昼食を軽く済ませると、また仮眠だ。よくもこれだけ眠れるものだと、我ながら感心する。

インターネットで現地の新聞に目を通す。こんな話題が見つかった。
そのひとつは、ノルウェー人が移民受け入れにどんな考えを抱いているか、を示すアンケート調査結果だ。もうひとつは、経済・金融関係の犯罪が「儲かる」というショッキングなニュースだ。両方とも今日付のThe Norway Post紙に掲載されたものだ。

1) ノルウェー、移民受け入れに肯定的

Aftenposten紙のアンケート調査によれば、ノルウェーでは移民を受け入れることに賛成する人が54%、反対がわずかに12%、どちらとも言えないが31%であった。賛成が最も多いのがオスロであった。
同じ調査をスェーデンのDagens Nyheter紙が行ったところ、ノルウェーとほとんど同じ結果だった。スェーデンでは、10人中6人が移民受け入れに賛成である。

(ちなみに、日本で昨年マクロミルモニタが実施したアンケートでは、「あなたは移民受け入れ拡大に賛成ですか?反対ですか?」の問いに対し、賛成23.1%、反対51.6%、その他25.3%であった。ノルウェーやスウェーデンとは正反対の反応と言える。)

2)金融犯罪は儲かる・四人に一人しか捕まらぬ

             
           経済・環境問題の国家特捜部長
           エーリック・シーア(Eirik Schea)氏

金融犯罪では、4人のうち3人が罪を逃れている、と経済・環境問題の国家特捜部長エーリック・シーア(Eirik Schea)氏は述べている。Dagens Naringsliv紙とのインタービューで、経済犯罪で捕まるのは25%にすぎない、と述べた。同時に、同特捜部が扱う事案がますます広範にわたり、複雑になっている、とのことである。

「金融犯罪の検挙率を高めなければならない。この種の犯罪は、ノルウェーの信頼にもとづく、開かれた経済に対する脅威である。わが国は裕福な国である。外国の経済犯罪者らは、検挙率が低く、金儲けの機会の多い国を狙い撃ちにしている。」とシーア氏は説明している。

経済・環境問題特捜部の2014年報告書によれば、当局の捜査件数が現在減り続けている。2004年には47件が特捜部の捜査を受けたが、2014年は25件にすぎなかった。

1999年、特捜部は76件の事案で有罪判決を得ている。それが2014年には、31件と半減している。当局には「事情聴取」22件の他75件が報告されたが「4件のうち3件」が棄却された。

「このように事案の大部分を棄却するのは痛手だ。われわれが希望する半分しか引き受けていない」とシーア氏は言う。
特捜部長はこのような事態を変えるべきだ、と認めている。
「振り返ってみると、もしわれわれが普通の経済犯罪にもっと強力に対処いていたら、金融犯罪を犯す外国人犯罪者にとって、ノルウェーは魅力に乏しい国になっていたであろう。改善は可能だ。これは全警察の責務である。」とシーア氏は語った。

(さて、日本における経済・金融犯罪の検挙率の現状はどのようになっているか、知りたいところだ。)

                                  「その13」終わり