極北トロムソ旅日記
その9 杉 浦 久 也 さん
今日われわれ老夫婦にとって、いつになく険悪な雰囲気となっていた。家内があれほど、「トロムソ、トロムソ」と言っていた憧れの地へ来てみたら、明けても暮れても雪や雨で、ひょっとしたら3週間の滞在中まともなオーロラに一度も恵まれることもなく、帰国しなければならないのではないかと二人共思い始めたていたからだ。家内があと10日あまり残して「もう日本へ帰る!」と言い出した気持ちもよくわかる。
ところが、やっと天が味方し今夜から明朝にかけ、天気予報といい、オーロラ出現率予報と言い、申し分のない状況が到来した。
フロントでアルバイトをしているIda嬢に最もみんなが信頼しているTromsoの天気予報のURLを教えて貰い、早速今夜から明朝にかけての予報を調べた。午後8時から晴れ始め明日まで見事な晴れマークである。
夕方まで曇っていた空が、予報通り8時過ぎから晴れ間が広がり始め、9時ころには一面の星空になった。この予報の正確さに舌を巻く。この天気予報は、ノルウェーの気象庁とノルウェー放送会社が協同してまとめたもので、これから2日間の天気の変化を1時間ごとに予報するものである。その一部分を紹介すると次のとおり。
23:59
午前0時すぎ、天空の舞いが始まる。
0:15ころ、光が天頂に集中し、オーロラ爆発を起こす。
このあと全天が光の巨大な傘に包まれた感じになる。超広角レンズでも手に負えない。フラメンコのスカートの中へ入ったら、こんな気分に似ているかもしれない。この一瞬のために、オーロラの追っかけから足が洗えないのだ。
「その9」終わり
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