《読売俳壇》入選


          蚯蚓鳴く健や文太を想ふ夜は      太田康直さん

             【自評】
                季語は「蚯蚓(みみず)鳴く」。江戸時代の歳時記には
               「鳴く声はなはだ清く、笛を吹くごとし。」とあり、みみずは
               鳴くものと信じられていた。しかし、みみずに発音器がなく
               鳴くことができない。雌雄同体であり雄が雌を誘発する必
               要がないのである。
                しかし、この季語は現代でも生き残っていて俳人たちは
               好んで使っているユーモラスな季語である。
                拙句中の健・文太は勿論昨年他界した高倉健と菅原文
               太で特に文太は私と同年同月生まれで感慨ひとしお。秋
               の夜には今でも時々思い出すのである。

                           =20151019読売新聞=