トロムソ便り 2016    その3

杉浦 久也 さん

そもそもこんな気象条件の悪いトロムソをなぜオーロラ撮影場所に選んだのか、説明しなければならない。前にも述べたように、ただオーロラを撮るだけなら内陸性の気候で晴天率の高いイエローナイフとかフェアバンクスが良いに決まっている。しかしどうも同じような背景に飽いてしまうのだ。

 家内も小生も海とオーロラの組み合わせが大好きである。昔ロフォーテン諸島のモルトスンドへ行った時の景観が忘れられない。切り立った岩山からオーロラの大きな光帯が立ち上がり、天頂を横切る。その緑色の光が海面を照らし、えも言われぬ雰囲気を醸し出す。

 その至福の時を求めてグリーンランド、アイスランドへも足を伸ばした。アイスランドではまる一週間滞在してオーロラとの遭遇をひたすら待ち続けたが、連日の吹雪で泣く泣く帰るしかなかった。ホテルの女主人が気の毒に思い、オーロラのビデオテープを寄贈してくれた。懐かしい思い出だ。

 さて、トロムソの場合だが、十数年前にトロムソ市内に2泊したことがある。沿岸急行船を待つためであった。夜外へ出るとオーロラが空を舞っていた。家内はすぐさま三脚をかかえ独りで駆け出した。行き先はフィヨルドを横切る大橋の上だ。小生もしばらくしてから、あとを追う。この一回の経験からトロムソではオーロラが簡単に見られる、という誤った先入観が脳のどこかにインプットされてしまったらしい。

 昨年三月あれほどさんざんな目に遭いながら、今年また性懲りもなくやってきてしまったのもあの初体験の印象が作用しているようだ。それに例えオーロラに出逢えなくても、トロムソの景観には別の魅力がある。それは、フィヨルドと雪山の取り合わせだ。深い紺碧の海と白い雪山を眺めながら、岸辺の散策路を巡るのはトロムソでの大きな楽しみだ。家内がよく口にする「まるでスイスの山々を海に沈めたみたい」という表現は、この辺をうまく描写しているように思う。

 そこで、今回のオーロラ撮影では、海と山とオーロラをいかに組み立てて絵を構成するかが、われわれ二人の課題である。


 



                                                その3 おわり



                                                     20160116