トロムソ便り 2016 その4
杉浦 久也 さん
毎日1時間程度の散歩を欠かすことなく行っている。−70℃にも耐えられるという効能書きのついたカナダ製の防寒靴は片方で1キロ余あり、これを履いて雪の中を歩くのはいい運動になる。なお、こんな高価な靴を買ったおかげで、元を取るために10年余もオーロラを追っかけることになった、というのが家内の変わらぬ意見でもある。
今回は、日常ありふれたことで恐縮だが、フィヨルド沿いの散歩の一端を写真とともに紹介したい(1月16日土曜の場合)。
前夜の雪が数センチ根雪の上に積もっていた。湿った雪が木々の枝にもまだ溶けずに残っていて、日本で見るような冬景色だ。
南の空が薄いオレンジ色に染まっている。
週末のせいか散歩をする人が多い。犬を連れた人、子供を連れたひと、外国から来た人などなど。行き逢う人になるべく声をかけるようにした。
最初突堤の先で二人の青年に挨拶した。彼らも笑顔で応えた。出身地を訊くとイギリスだという。更にイギリスのどこかと質問すると、ロンドンとの答えであった。何年か前にロンドンへ行ったとき、駅員の喋る訛りのひどい英語が聞き取れず苦労した、と話したら、イギリス人でも困ることがあるとの返事であった。地域的訛りのほかに階層的なまりもひどいからだ。
ロンドンから来た二人に近づく筆者
小柄な青年の英語がアメリカ英語であったから、もともとの出身地を訊ねると米国西海岸のオレゴン州との返事であった。これから二人は大学の博物館へ行くのだと言っていた。明るい青年たちであった。
公園の雪の上で乳母車を引っ張っているのは若い母親らしい。
こちらで子供を乗せた橇を押しているのは父親らしい。
また近くでは子連れの若い女性二人が火をおこしている。話しかけることにした。女児の年を訊ねると1歳半との返事。名前も訊いたが、忘れた。こんな寒い時でも幼い子供を外に連れ出すのが、こちらの育児法かと尋ねたら、「その通りです。でも私は−10℃以下になると、幼児の外出は控えます」と言っていた。
広大な公園の向こうではブランコに興ずる子連れの女性たちがいた。
雪なんかものともしないたくましいノルウェー人はこのようにして育って行くようだ。
帰ろうとしていると、若い娘さんたちの笑い声が聞こえた。三人で写真を撮りあっていた。二人を立たせ、一人が撮る。三人一緒がいいだろうと思い、「一緒にとってあげましょうか」と言いながら近づいていった。三人はポルトガルから1週間の休暇でトロムソへ来たとのことであった。20歳前後の学生かと思っていたが、20代半ばのOLたちであった。別れ際に一枚写真を撮らせて貰った。
ポルトガルの娘さんたち
当地にも日本同様愛犬家が多い。散歩で行き交う人々の半数以上が犬を連れている。独りで複数の犬を引き連れた人も珍しくない。
雪道を勢いよくジョギングする人たちにもよく出会う。若い女性二人が北上して来た。「毎日走るんですか!」と声を掛けると、「イェーース!」と叫びながら通り過ぎて行った。
ジョギングをする女性たち
ざっとこんな具合で毎日の散歩を楽しんでいる。
その4 おわり
20160117