トロムソ便り 2016    その6

杉浦 久也 さん

 一昔前、私どもがまだインターネットに馴染みがない頃、イエローナイフやフェアバンクスでオーロラを追っかけていたのは、あたかも目隠しをして鬼を探し求めるようなものだった。日が暮れると、家内と2時間ずつ夜空を見張りオーロラの出を待った。もっとも小生は晩酌を欠かさなかったから、見張り役の大半は女房の仕事になっていた。おかげで家内はオーロラのかすかな兆しも見逃さぬ能力を身につけた。

その頃にくらべると、インターネットのおかげでオーロラ出現についてある程度の予測ができるようになった。出現の日時、強度、観測可能場所、等々の情報を提供してくれる。ありがたいことだ。

 今回トロムソでもっとも活用したのはAurora Forecastというサイトである。次のようなデータが図示されていて、われわれ素人にもよく分かるようになっている。


 


 これは現在のKp指数が1.6であることを示している。Kp指数というのは、太陽活動で放射される太陽風が地磁気を擾乱させる強さを表すもので、レベル0からレベル9までの段階がある。たとえばフェアバンクスやトロムソではKp指数がレベル1でも十分オーロラが見られるが、もし仮に東京で見られるような強大なオーロラとなればレベル9以上でなければならない。今回トロムソ滞在中の最大Kp指数はレベル4.33であった。

 次はよく知られているオーロラ楕円帯である。これはオーロラが頻発する地帯を指し、磁極を中心にして楕円形を描いている。オーロラの強さに従い、緑、橙、赤で示される。先年フィンランドのアカスロンポロで見た楕円は大きく太く真っ赤であった。残念ながらそのときは悪天候でオーロラそのものは見られなかった。この楕円帯からオーロラの強さや出現時刻の予測ができる。地球の自転に従い、自分の現在地がいつごろもっとも強い楕円帯の部分に差し掛かるか、およその見当がつくからだ。


 


 もう一つ便利なサービスがある。Aurora Alert(オーロラ警報)で、自分のメールアドレスを登録しておくと、強いオーロラが出現しそうな時、日時・場所・強さなどを事前に知らせてくれる。観測態勢をとるためのいわば警戒警報である。

 しかしオーロラを含む自然現象は人知をはるかにこえるものである。上記の予報も当たることもあれば、まったく当たらないこともある。これがあるからこそ、予想外の見事なオーロラに遭遇したときの喜びはなんとも喩えようがないのだ。


 

                             トロムソ市街を覆うオーロラ



                                                   その6 おわり


                                                      20160119