八 月
1日 八月や心に留むる忌の数多
2日 縁側に抹茶茶碗と古団扇
3日 お国ごと氏素性ある鮓自慢
4日 籐寝椅子手を滑り落つ文庫本
5日 亡き友を肴に弾むビアガーデン
6日 今夏オバマ訪うて献花し演説す〔5/27広島へ〕
7日 星の恋この思慕育ててはならぬ
8日 杖を突き飛び石伝ふ今朝の秋
9日 この夏も長崎に鐘鳴りわたる〔オバマ17分中ナガサキにも言及〕
10日 妻籠宿訪ふ時いつもラムネ飲む
11日 墓参り清酒一本供へあり
12日 夭逝の妹ありて盆用意
13日 盂蘭盆会親父口伝の経忘れ〔注1〕
14日 棚経や箪笥の上に位牌三つ〔注2〕
15日 戦さ果てし日よりの惨禍身の内に
16日 阿波踊てんてこ舞ひを舞ふ阿呆
17日 頭数かぞへ残暑の見舞ひ出す
18日 管制なき電球まぶし涼新た
19日 お施餓鬼や客人(まろうど)を待つ洗鯉
20日 上高地嘉門次小屋の岩魚(いわな)焼き
21日 閑古鳥賑はい去りし商店街
22日 その人の名の懐かしき酔芙蓉
23日 地蔵盆水子地蔵の並び立つ
24日 久し振りの抹茶一服残暑消し
25日 生涯の写真を始末して涼し
26日 友死にてつくつく惜しい法師蝉
27日 夏休宿題代行業盛ん
28日 かなかなや紛ふなき木霊の声
29日 赤とんぼ群れ飛ぶを見る久しぶり
30日 八十路来てもう胡麻擂りは致しません
31日 秋来ぬと合点がてんの破(や)れ団扇
〔注1〕三唱禮「南無西方極楽世界本願成就身阿弥陀・南無西方極楽世界
光明摂取身阿弥陀・南無西方極楽世界来迎印如身阿弥陀」
平成28年の盂蘭盆の時点で突如閃いた。
〔注2〕小僧の頃に檀家数十軒を回った時の経験。
20160801