イエローナイフ旅日記 (3)
杉浦 久也 さん
早速身の回り品だけ持って「柳の間(Willows)」へ移る。ツインルームで、本格的なトイレやシャワーが付いている。家内ともども15時過ぎまでぐっすり眠る。16時ころ遅い昼食。日本から持参した「中華丼」というレトルト食品だ。なかなかうまい。
湖面を見渡すと雪原をスノーモビルが行きかっている。黒い犬が散歩につれ出してもらい、飼い主の周りを駆けている。のどかな風景だ。
今夜のオーロラ撮影場所を探すため、家内と湖面へ出て昨夜とは反対方向(北方)を目指し、飛行機の氷上滑走路を歩く。湖面には凍結期間に2キロくらいの臨時滑走路ができる。固く滑らかで歩きやすい。三脚を立てるのも楽だ。
暗くなると家内が2階のラウンジへ行き、ガラス越しに東の空を見張る。少しでもオーロラらしき気配があればカメラで撮ってみる。青い光が写っていればオーロラの可能性が高い。
23時を過ぎたころ、その兆候が表れた。急いで湖面へ移動、昼間目星をつけたあたりに三脚を立てる。東の地平線から緑色の光の帯がゆらゆらと立ち上がり、西の地平線まで天空を横切っている。1時間ほど過ぎると、突然動きが激しくなり、光の渦が空一面を覆う。日付が変わって18日の1時過ぎまで撮り続ける。
厚い防寒手袋をはめているのだが、指先の感覚がなくなってくる。以前、口で呼吸をしたために、気管支をやられてしまった経験から、今では鼻から息を吸い込むことにしていたのだが、鼻毛が凍りつき息を吸うのが困難になってきた。そのうちに体が震えだした。家内を湖面に残して宿に戻り暖をとる。震えもおさまった。ちなみに外気温はマイナス23℃に下がっていた。
湖上に残してきた家内のことが心配になり探しに行く。本人は平気で、オーロラの一番見ごたえのあるフィナーレを撮り終えて、得意満面であった。
つづく
170321