一　月

　１日　平成もあと四ケ月年迎ふ

　２日　書始めや一二三の字一つずつ

　３日　悪筆で添へ書き出来ぬ賀状かな

　４日　油火を消す模擬訓練や出初式

　５日　五日はや痛飲し通院の破目

　６日　良寛の声聞こえ来し手毬唄

　７日　人日や日がな一日碗を愛で

　８日　ラガーらは薬缶の口から喇叭呑み

　９日　竹馬や初乗り天に上りしこと

１０日　大見得を切り声掛かる初芝居

１１日　けふ鏡開きの汁粉振る舞はる

１２日　初鴨を水面（みなも）きらめきお出迎へ

１３日　どんど火で薯焼き老いのとどまらず

１４日　八十路半ば今人生の玄冬期

１５日　新成人キラキラネームの多きこと

１６日　昔撮りし赤いポストの上の雪

１７日　座礁船が嗚咽してをり虎落笛（もがりぶえ）〔注１〕

１８日　ノッポビル消してさばさばしまき雲〔注２〕

１９日　手放しで命惜しまん寒昴

２０日　屋根の雪卸せぬ高所恐怖症

２１日　憧れの四国遍路や初大師〔注３〕

２２日　寒星のまたたきにまたたき返す

２３日　寒垢離の念力満ち充つ剛の者

２４日　炉話や尾張・三河弁微妙な差

２５日　お受験の孫を連れ出し初天神

２６日　冬晴れや長靴二足干してあり

２７日　去年（こぞ）購（あがな）ひし雪掻きスコップ出番なく

２８日　初不動法善寺横丁へ行く

２９日　そしられても何処吹く風の大くさめ

３０日　室咲きの春菊摘みて夕支度

３１日　探梅に馳せ参ずるも同志ゐず

　　〔注１〕ひゅうひゅうと電線を鳴らすような激しい西風。
　　〔注２〕「雪しまき」のこと。雪を伴った激しい風。
　　〔注３〕弘法大師の初縁日
　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　20190101