中日俳壇 年間賞 佳作
    中日新聞 2024年(令和6年)12月29日(日曜日)掲載
                            高田 正子氏選

   ガラス戸に透けて守宮(やもり)の五本指
             (7月28日)

            水野 謙二 作

【年間総評】能登の震災に始まり、猛暑、
大水と災害が続く年だった。亡くなる方
も多く、その都度胸がつぶれた。そうし
た中にも、早速帽子を新調した焼きい
も屋さんや、骨をきしませて暑さに向か
い立つ方がおられた。立春には「お日様
ようこそ」とつぶやき、一日の終わりに
は詩の文字を書き連ねる。クモをチビ
と呼び、ヤモリの指の先端にまで目を
こらしたりもする。ささやかでよいのだ。
喜びも悲しみも、そのときどきにシャッ
ターを切る感覚で、俳句に留めていきま
しょう。