「淮南子」に「塞翁が馬」の話がある。諺に「人間万事塞翁が馬」と言われる。「人間」は「じんかん」と読む。これは社会の意味である。この故事は高校の国語の教科書に必ず出てくる話であるので、ここでは物語の紹介は割愛する。
　この物語は大変楽天的な考え方で、苦難にもへこたれない知恵を教えている。また、有頂天を警戒する教訓にもなっている。
　「韓非子」に「矛盾」の故事がある。中国人はこの矛盾関係を論理的に考えることをせず、実用的な立場で処理してすませている。西洋流に考えれば、矛盾する関係というのは、一方が立てば他方は否定すべきものになるのに、この話は論理関係を導き出すことをしなかった。易経で言う陰陽の対立関係を主としている。
　このような考え方は、易の哲学として尊重されただけでなく、老荘の哲学の中にも色濃く反映されている。
　西洋の論理的な考え方と真逆な考え方は、中国思想の影響をうけたアジア諸国の思惟方法となっているのである。