平成22年度
一日一句 365句
五 月
1日 有難や生きて迎へし聖五月
2日 玄関に杖置く八十八夜かな
3日 ペンだこも消えて憲法記念の日
4日 葉桜を愛でて静かに河岸歩む
5日 武者人形兜にいただく愛てふ字
6日 絞り出す重き新茶のひと雫
7日 思ふこと数多卯の花腐しかな
8日 咲いて知るこの木なんじゃもんじゃの木
〔※〕別名ヒトツバタゴ。自生地は愛知、岐阜、対馬。
9日 母の日や愚痴聞かされし日の遠く
10日 糸電話で囁き合ひし麦の秋
11日 卯の花や佐々木信綱記念館
〔※〕東海道石薬師宿の生家跡に建つ。
12日 噴水や駄々っ子やだやだやだってば
13日 冷奴亡父に並びし齢かな
14日 麦炒粉三時のおやつ廃れけり
15日 打水や余りを東海道に撒く
〔※〕東海道を踏破した自身の記念の行為。
16日 アンダンテ・カンタービレや風薫る
〔※〕チャイコフスキーの弦楽四重奏曲一番第2楽章冒頭の旋律。
ムード音楽によく編曲される。
17日 進化論どこ吹く風や山椒魚
18日 口だけになりて餌を待つ燕の子
19日 胡瓜揉みなほも揉むものあれば揉む
20日 朝焼けや早めに洗濯物を干し
21日 虚しさや素手で蝿取るコツ会得
22日 木下闇隠れ逢ふとにあらねども
23日 ストレスの鬱脱ぎ竹は皮を脱ぎ
24日 奔放な滝柔らかく撮りにけり
25日 神を尋め蝸牛上へ上へ行く
26日 浮いて来いポニヨはブリキの金魚かな
〔※〕浮き人形の別名で、子供の水遊びの玩具。
27日 草笛や銃後でありし少年期
28日 老いの願ひ叶ふものなくラムネ玉
29日 紫陽花や土の命じる色に咲き
30日 桑の実をふふみし口や濃紫
31日 船頭が指差す浮巣鳰の海
〔※〕琵琶湖の別名。
220501