平成22年度
一日一句 365句
七 月
1日 蔓薔薇や表札に浦島の二字
2日 海昏れて匂ひ懐かし草いきれ
3日 二階よりビキニぞろぞろ海の宿
4日 氷旗大草鞋も吊るされてをり
5日 川泳ぎの子らふりちんでありしかな 〔※1〕
6日 乗り合はす碧き瞳や船料理
7日 手足の箍ゆるめ昼寝をむさぼれり
8日 弱音吐き凪の風鈴舌垂らす
9日 飄飄と生きて四万六千日 〔※2〕
10日 旧友逝けりふるさとに鱧食ひに行く 〔※3〕
11日 缶ビール歩きつつ飲むこれも旅
12日 聞き役に徹し団扇の絵に見入る
13日 登山服豆粒ほどになりて消ゆ
14日 革命を信じてをりし巴里祭
15日 さあどいた子供神輿のお通りだい
16日 飛び込んで来て油蝉鳴き始む
17日 ありし日の立志の夢や雲の峰
18日 波乗りに白い妖精牙をむき
19日 羅や胸の谷間を深く見せ
20日 ぞろぞろと夜店ひやかす宿浴衣
21日 向日葵や脂ぎったる頃ありし
22日 蝉時雨沈黙に距離感じてる
23日 決断やあとはさばさば冷し酒
24日 きのふけふ猫の舌焼く暑さかな
25日 ソーダ水グリコのおまけ懐かしく
26日 花茣蓙やお医者ごっこのワンシーン
27日 夏草を刈ればあっけらかんとして
28日 言ひ出せずひたすら泳ぎゐし二人
29日 蚤虱集団疎開の子ら老いし
30日 臍曲げて鰻屋に鯰食ひに行く
31日 遠花火より面影の人遠く
〔※1〕日本国語大辞典にしか載っていず、それによれば「ふるちん」でも可とのこと。
〔※2〕鬼灯市の別名。四万六千日の功徳を授かるという滋味溢れる季語。
〔※3〕関西では穴子や鰻に劣らず調理される高級魚。
220601