平成22年度

一日一句 365句

九  月


 1日 震災忌地震ひと口メモの日々 

 2日 風の盆老いの岡惚れ横恋慕

3  予報士や台風の目を突付く癖 

 4日 風よりも雲にてぞ知る秋気配

 5日 吟行の一団と見し萩の寺 

6日 一人旅九月渚に靴を脱ぎ 

7日 秋の陽を溜めてをるなり船溜り 

 8日 熟れ葡萄心通はす皿一つ  

9日 蓑虫や隠れ住むには良き処 

10日 二百二十日何事もなく過ぎにけり 

11日 枯淡てふ域ほど遠しカンナ燃ゆ 

12日 亡父(ちち)に似て来しと皆言ふ鰯雲 

13日 霧深しケルンも見えぬ午前五時 

14日 ぎこちなき老いの逢瀬や吾亦紅 

15日 幸薄き女猫抱く窓の月 

16日 街の灯や名月仰ぐ者もなく

17日 底紅や朱唇妖しく艶めきて ※底紅は槿の別名 

18日 音冷えて来し風鈴を外しけり

19日 唐辛子飛騨古川の白き壁 

20日 地獄耳同士ひそひそ秋扇 

21日 鐘の音にコスモス揺るる山の寺 

22日 小鳥来て我が刻咥え行きにけり ※「小鳥来る」は秋の季語  

23日 お稚児さん募集の掲示秋うらら 

24日 灯火親し靴の形のインキ壷 

25日 秋風や一膳飯屋店を閉ぢ   

26日 初恋や鬼灯鳴らせしおちょぼ口  

27日 蚯蚓鳴く住めば都のまほらかな ※蚯蚓は発音器がなく鳴かない俳味のある秋の季語。   

28日 秋の気が包むレトロな宿場町 

29日 銀やんまつがふ少年の日のままに 

30日 大笑ひしても独りの夜長かな 




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