平成22年度

一日一句 365句

十  月

 1日  非農家の少年の飢ゑ南瓜粥 

 2日  コスモスの揺れに風あることを知り

3   千枚田稲の穂波の先の海

 4日  火の見櫓家ごとにある柿たわわ

 5日  桃剥けば勝手に剥がれゆく感じ 

6日  垣根越し石榴酸っぱさう柿甘さう

7日  拗ねられる人ひとり欲し利鎌月 

 8日  七十路の泣き言無用ななかまど

9日  騎馬戦も棒倒しもなき運動会

10日  双頭の大蛇に呑ます古酒新酒

11日  稲架ぶすまもういいかいの声遠し

12日  猫じゃらしに触れてバイバイ一人旅

13日  名に惹かれ竜飛岬に秋を見に

14日  老いの恋胡桃はうまく割れません

15日  雁鳴くや契りし仲のあにいもうと

16日  老人の中の少年あけびもぐ

17日  籠り居て(よそお)はぬ老い山粧ふ ※「山粧ふ」は秋の季語

18日  無残やな切り刻まれし老案山子 

19日  休肝日明けの快便天高し

20日  露の世や妻子に頒つ物もなく

21日  雁渡しこの道の先船着場 ※「雁渡し」は雁の渡って来る頃吹く北風

22日  破らるるための指きり秋深し

23日  紅葉挟む栞代はりに書にはさむ

24日  喜寿といふ節目の年や菊日和

25日  秋思の貌三面鏡に三つ置く

26日  古き道辿りてをれば鳥渡る

27日  悔しさの地団駄を踏み木の実踏み

28日  愁ひつつ旅にしあれば秋の声

29日  釣瓶落しいつまで続く立ち話

30日  酒絶ちしよべの名残や酔芙蓉 

31日  敗戦や少年にぐみ渋かりき


221001