平成22年度

一日一句 365句

十 一  月


 1 (ひかげ)ればやっと晩秋らしくなり      

 2日 死に神も留守におはすや神の留守  

 3日 竹とんぼ子らに教へて文化の日  

 4日 屋上の歓声落とし天高し    

5日 真っ直ぐな道饒舌の銀杏散る  

 6日 団栗や子らの喚声空に抜け  

 7日 カタカナのやうな女や冬ざるる  

 8日 ポケットに鍵いろいろや冬の旅     

 9日 ポインセチア髭もじゃメキシコより帰国  

10日 我を見る眼差し深し石蕗の花    

11日 煮大根大好きになり齢喜寿     

12日 生きてあればこその寂しさ葱刻む  

13日 翁忌や近江には亡き父母妹     

14日 茶の花や茶畑続く牧之原       

15日 神主の居ない氏神七五三       

16日 肝心な時の口下手木の葉髪     

17日 侘び助や生家の茶室の躙口     

18日 風花や葬列続く野辺送り       

19日 余生には余生の夢や山眠る     

20日 しぐるるや駅にまだある伝言板    

21日 海鳴りを聞くのみに良し冬の旅    

22日 次々に我を追ひ抜く冬木立      

23日 失業者溢れ勤労感謝の日      

24日 鼻歌の軍歌や日向ぼこの爺     

25日 冬晴や茶房の前の尊徳像      

26日 冬ぬくし路面電車の小さな旅     

27日 花八手待った待ったのへぼ将棋    

28日 冬の陽が鉄塔にぶら下がってる   

29日 鴨や脚そろへ流れに身を委ね     

30日 詩を汲みに来し湖や浮寝鳥      


221101