一日一句 365日(平成23年)
一 月
1日 生きて二万七千日余年迎ふ(注1)
2日 年頭の所感年々遺書めきて
3日
4日 片言の
5日 初電話はたして
6日
7日 七草粥古びしめをと椀と箸
8日 恋唄のオンパレードや加留多歌
9日 あかぎれや痛いの痛いの飛んでゆけ
10日 傘の雪払ひ身軽になりにけり
11日 路地ふさぎ押し
12日 日脚伸ぶ路地を抜ければ船溜り
13日 やはらかな眼差しにあふ初芝居
14日 伊達自慢今着膨れてをりにけり
15日 どんどの火護符や注連縄舞ひ上がり
16日 枯野行く浴びし一語の痛み負ひ
17日 呑ん兵衛も飲みたくはなし卵酒
18日 凍て道や後ろに迫る靴の音
19日 冬満月ちょこんと廃煙突に載り
20日 大寒や死の淵覗けば仄明かり
21日 村芝居役者の手馴れし頬被り
22日 水洟や昔袖口光らせて
23日 風哭いて狐が啼いて過疎の里
24日 埋火といふ語に疼く胸の奥
26日 探梅や風流といふ名の酔狂
27日 すれ違ふ目深帽子に大マスク ]
28日 山眠る麓に朽ちしラブホテル
29日 親捨てし罰当たりめや鎌鼬〔注4〕
30日 手袋を脱いで別れの握手かな
31日 休肝日つひに作らず初晦日
〔注1〕夏の季語に「四万六千日」がある。
〔注2〕近江商人は泥棒してでも、伊勢商人は乞食をしてでも儲けだす、と宵越しの金はもたない江戸っ子が揶揄した言葉。
〔注3〕押し競饅頭は、多人数の子供がが寄り集まって「押しくらまんじゅう」の歌を歌いながら互いに押しくらべをして寒さをしのぐ冬の遊戯。
〔注4〕冬、突如として人の皮膚、頬や脛など露出している所が鋭い鎌で切ったように損傷して出血する。鎌を持った妖しいけものの仕業とみなす俳味のある季語。
230101
平成22年度
一日一句 365句