一日一句 365日(平成23年)

二月


 1日  炉話や大法螺肴に酌み交はす

 2日  春隣友あり近くより来たる  

 3日  節分よ誰れぞ常ならむ歳拾ふ 〔注1〕

 4日  ははそはの義母(はは)溌剌と春立ちぬ 〔注2

 5日  春めくや見れば靴下違ふ色

 6日  まんさくやつひの住処となりにけり

 7日  春寒や癌取り人畜無害の身

 8日  下萌を踏む足取りの覚束な

 9日  街路樹の芽吹きに大いなる遅速

10日  鶯や品変へ声変へ枝を変へ

11日  建国日皇紀の年号神宮に

12日  手を滑りうすらひ玻璃のごとく割れ

13日  梅咲いて老いの出不精改まる 

14日  踏み絵踏み生きし伴天連いとほしき

15日  晩年の幼な心や紙風船

16日  うぬぼれし時ありバレンタインの日

17日  嫌な名を付けてくれしと犬ふぐり

18日  ほしいままむさぼる老いの朝寝かな

19日  余寒なほ寝覚め空しき休刊日

20日  留守居して耳を掻きをり春炬燵

21日  昔むかしの銃後の味や田螺汁 

22日  淡雪の舞ふ中を行く野辺送り

23日  誰からも愛されずしてヒヤシンス

24日  蝌蚪の群れ衆愚ならざる力満ち

26日  山独活に舌つづみ打ち老いにけり 

27日  料峭やベルトの穴を一つ足し

28日  蕗味噌や恋知らざりし銃後の子

 〔注1〕「よたれそつねならむ」を踏まえている。

〔注2〕頭韻にご注目下さい。     



230201


平成22年度

一日一句 365句