AIJ問題
資金の大半は小規模な年金 会社資料で判明
投資顧問会社「AIJ投資顧問」(東京都)の年金消失問題で、同社の集めた資金の大半が、中小企業などの小規模な「私的年金」からの50億円未満の受託だったことが25日、毎日新聞が入手した同社の資料で分かった。背景には00年以降の「年金崩壊」があるとされ、専門家は「世界的な金融危機で多額の損失が生じた小規模な企業年金が運用で挽回しようと高利回りをうたう投資会社に流れ損失を増幅させる構造的な問題が見える」と指摘する。
毎日新聞が入手したのは04年9月末〜11年9月末の資料。04年8月創業のAIJの各年末(11年のみ9月末)の契約資産状況をみると、獲得顧客件数のうち私的年金の件数は04年16(全16)▽05年56(同59)▽06年72(同72)▽07年78(同79)▽08年118(同120)▽09年114(同116)▽10年118(同120)▽11年124(同127)。
契約規模別でみると、受託額が10億円未満は契約件数の40〜61%、10億〜50億円未満は37〜61%で推移し、各年の50億円未満は98%以上を占めた。共済年金など公的年金の運用はゼロで、機関投資家からの受託はほとんどなく、契約者の多くは、中小企業でつくる「総合設立型」の年金基金とみられる。
年金基金には大企業が単独で設立する「単独設立型」や、グループ企業で作る「連合設立型」などがあるが、「総合設立型」は地域の中小企業業界などが組織するケースが大半とされる。「年金崩壊」は00年以降のITバブル崩壊やサブプライムローン問題などが背景にあり、とりわけ08年のリーマン・ショック以降は大半の基金が赤字に転落。企業年金維持に行き詰まり、損失の負担に耐えられず倒産に追い込まれるケースもあるとされる。
企業年金問題に詳しい経営コンサルタントの宮原英臣氏は「体力のある大会社の企業年金なら、損失回復に向けて無理な運用をせずとも何とかなるが、小規模な企業年金は運用で何とかしようとし、リスクの高い商品につられてしまう」と指摘している。【川名壮志】
毎日新聞 2012年2月26日 2時30分
AIJ投資顧問とは一体何者か
24日に明らかになった年金資金1830億円の大半が消失したとされる事件で、その渦中にある企業についてはまったく知られていないといってよいかもしれない。
だが、日本の資産運用業界関係者によれば、全くの無名だったわけではなさそうだ。ダウ・ジョーンズ・ファクティバのデータベースをざっと検索してみると、AIJは少なくとも過去に1度、英語記事の見出しを飾っている。その当時はもっと肯定的な内容だったが。
2008
年11月の日本経済新聞の記事によると、AIJは格付投資情報センター(R&I)がまとめた年次アンケート調査の結果、年金資金運用業界でトップの評価を受けている。同記事によるとR&Iの調査は資産運用企業を「運用能力とその他の要因」に基づいて各企業が評価するもので、大手の資産運用会社が首位の座を占めなかったのは調査開始以来14年間で初めてだったという。
その記事によれば、AIJがアンケート調査で首位となったのは、「乱気流となった2007年度も運用実績が安定していた」ことが理由だったとして、オプションやその他のデリバティブ商品を主体とした同社の運用手法について言及している。
AIJとAIJに年金を委託していた企業にとって不運なことに、2012年は2007年とは比べ物にならないほどの「乱気流」となりそうだ。
記者:Kenneth Maxwell
240228 追記