日本の食文化は世界各地に広まっていますが、この数年、注目度が一気に高まってきているのが bento (弁当)です。bento は sushi (すし)などに続いて国際語になりつつあると言ってもいいかもしれません。

 欧米では辞書に載るケースも相次いでいます。

 フランスの老舗出版社が発行する「プチ・ラルース・イリュストレ」(Petit Larousse Illustre) は昨年、このbento を新語として採用しました。フランス語として認めたわけです。

 英語の世界ではもっと前から bento を採用している辞書もあります。

 例えば、イギリスの Oxford Dictionary of English (ODE)。ちょっと古風な定義ですが、以下のように説明しています。

  a lacquered or decorated wooden Japanese lunch box

   漆を塗ったり、装飾を施したりした日本の木製ランチボックス

  a Japanese-style packed lunch, consisting of such items as rice,
vegetables, and sashimi

   米、野菜、さしみなどを詰めた日本流のランチ

 辞書に載るということは社会で広く認知されるようになったことを意味します。実際、欧米のメディアでは bento という言葉を説明抜きで使うケースが当たり前になってきています。

 例えば、最近の米紙ワシントン・ポスト。有名人の動向を伝える欄で次のような記事がありました。

  Michelle Obama lunching Saturday with her daughters at downtown's new
Hamilton restaurant. Chicken and biscuits, white bean soup and a bento box.

   ミシェル・オバマ(大統領夫人):土曜日に(ワシントンの)中心部の新しいレストラン「ハミルトン」で娘たちと昼食。チキンサンド、ホワイトビーンスープに弁当ボックス。

 この例はレストランで出される弁当ですが、いま欧米で注目されているのは家庭で作る弁当の方です。

 色とりどりの食品をこぢんまりとした箱の中に並べる弁当は、ヘルシーで安上がりなうえ、美しくてかわいい――。人気の秘密はそんなところにあるようです。

 海外の若い人たちの間では、絵を描くように食材を並べる「キャラ弁」(character bento) も人気です。

 イギリスのBBC放送のウェブサイトは Japan's amazing lunchboxes(日本の驚くべきランチボックス)と題するリポートを載せています。取り上げているのは幼稚園児たちの「キャラ弁」です。

 フランスの弁当ファンのブログには次のような記述もありました。

 「限りない創造性に満ちあふれ、装飾に重きを置くこの国(日本)では、一つ一つの弁当はまさに小さな芸術作品だ」

 私たち日本人にとっては少々こそばゆい賛辞ですが、確かに弁当には日本の食文化や美意識の粋が詰まっていると言えるかもしれません。


   http://www.yomiuri.co.jp/job/biz/
               columnbuzz/20120301-OYT8T00593.htm


bento

国際語になった「弁当」