被災3県への職員派遣

 

2012.3.20 21:40

      

      旧北上川の堤防建設で住民説明会に出席する新潟市
      の応援職員、吉田宏さん(後列中央)=宮城県石巻市

 東日本大震災で被災した3県の市町村が平成24年度に総務省を通じて全国の自治体から受け入れる応援職員が、要望する約570人を大幅に下回る約300人にとどまっていることが20日、総務省への取材で分かった。土木などの専門知識を持つ技術系職員が不足しており、関係者は「人手はいくらあっても足りない状態。より多くの職員を長期的に派遣してほしい」と訴えている。

 総務省は3県以外の自治体から被災地に派遣する職員の調整を担当している。

 同省によると、宮城県内の15市町は24年度、約330人の職員の派遣を要望したが、2月下旬までに応じたのは6割弱の189人。福島県はさらに深刻で、約180人に対し4割弱の67人にとどまっている。

 このため、各市町村は県を通じて、内陸部の自治体や姉妹提携するなど関係の深い自治体などに直接派遣を依頼し、職員の確保に努めている。岩手県の自治体は総務省を通じた42人以外にも独自ルートで約120人を集め、必要な人数の確保に成功した。

 被災地では震災直後は、救援物資の輸送など避難所支援や罹災(りさい)証明書の発行など喫緊の問題に対応する職員が多数必要で、昨年7月時点では、宮城県内の被災市町村に1269人、岩手435人、福島252人の応援職員が活躍した。

 その後、こうした仕事が一段落したため、応援職員が帰り、今年1月時点で宮城195人、岩手95人、福島74人になっている。しかし、復興計画が具体化するにつれ、土木・建築や都市計画などの専門知識を持つ技術系職員の支援要望が高まっているという。



 「客観的に見ても人手は全然足りていない」。被災地で最も多い約3800人の死者・行方不明者が出た宮城県石巻市に派遣されている新潟市職員、吉田宏さん(41)は、連日深夜まで勤務を続ける職員らを間近に見て、「よく倒れないな」と感じている。

 石巻市によると、他の自治体からの応援職員は、吉田さんら新潟市からの5人を含めて20自治体33人。いずれも市内に居住して通勤しており、4月以降は38自治体64人に増員される。

 ただ、震災で25人の職員が犠牲になり、3月には24人のベテラン職員らが定年などで退職。このため、応援職員に新規採用を加えても震災前と比較して43人増加するだけだ。

 これに対し、平成24年度の震災復旧・復興費用を含む予算案は、23年度(約617億円)の4倍を超える約2632億円に達している。担当者は「ぎりぎりの人数。仕事量の増加についていくのに精いっぱい」と話す。

 吉田さんは高台移転や土地区画整理などまちづくり計画を担当する市基盤整備課に配属された。7月の赴任直後から約5カ月間、復興構想の住民窓口を担当した。所有する土地がどうなるか先が見えず、興奮して怒鳴り声を上げる男性や涙を流す女性に対応し、「自分も同じ立場だったら…。早く道筋をつけなければ」と思いを強くしたという。

 高台移転の候補地調整の業務を経て、現在は旧北上川沿いの堤防建設に伴う道路計画などを担当する。業務では「自分が暮らした場合にどうか」をまず考えているという。

 吉田さんらは総務省を通じた応援ではなく、新潟市の消防隊が石巻市で活動した縁で、独自に派遣された。まもなく3人は戻るが、吉田さんら2人は24年度も石巻市で勤務を続ける。

 連日残業があり、帰宅が午後10時を過ぎる日も少なくない。それでも「職員らの姿を見て、少しでも力になりたいと思う。復興計画にどっぷり入ることで課題も見えてきた。被災者が安心して住める町にしたい」と意気込んでいる


http://sankei.jp.msn.com/politics/news/
                     120320/lcl12032021410004-n1.htm


要望570人、まだ300人「技術系が不足」