露、北方領土の資料押収

「ビザなし」協議の代表団から サハリンの空港で

2012.3.23 01:27

 【モスクワ=遠藤良介】北方領土との今年の「ビザなし交流」について協議するため、ロシア極東サハリン(樺太)の州都ユジノサハリンスクを訪問している日本側代表団が21日、入国の際に携行していた北方領土に関する執務用資料を空港の税関当局に押収されていたことが分かった。当局者は代表団に「有害文書」と説明したという。日本外務省が事態の把握を急ぐとともに、対応策を検討している。

 消息筋によると、日本側の代表団には外務省職員のほかビザなし交流の実施を担う民間団体「北方領土問題対策協会」と「北方四島交流北海道推進委員会」の代表者が参加。外交旅券を持たない複数の民間関係者がユジノサハリンスク空港で所持品検査を受け、北方領土問題に関する資料を押収された。

 空港当局者は代表団に、これらの書類が北方領土を事実上管轄するサハリン州の法に照らして「有害文書と認定される」などと押収理由を説明。日本側は「承服できない」と抗議したものの、22日までに資料は返却されていない。

 押収されたのは、日本外務省が北方領土問題に関するわが国の立場や四島交流についてまとめた執務用の参考資料で、機密文書などは含まれていないという。資料の中に北方四島を日本領と区分する地図が記載されていたことが問題とされた可能性もある。

 ビザなし交流は1991年、日本と旧ソ連が領土問題に関する双方の法的立場を侵害しないとの前提で合意した日本人と四島住民による相互訪問の枠組み。昨年3月までに日本側から延べ9962人、四島側から同7336人がこの枠組みを使って渡航した。

 日露双方は毎年3月頃に渡航の実施時期や方法を協議することになっており、日本の代表団は22〜23日の会合に参加するためにサハリンを訪れている。

 ビザなしでの渡航をめぐっては近年、ロシアが国内法の適用を主張して実効支配の強化につなげようとする動きを目立たせてきた。

 2009年には四島への人道支援物資を運搬しようとした代表団が「出入国カード」の提出を求められ、支援物資の供与事業が停止に追い込まれている。また、ロシア側は10年、四島を訪れる日本船舶に「入港税」を支払うよう要求し、日本から交流事業経費を受け取る国後島の団体「クリール日本センター」がこれを肩代わりする形で決着させた経緯がある。

http://sankei.jp.msn.com/world/news/
                  120323/erp12032301270000-n1.htm