木造再建めぐり議論

現コンクリの名古屋城天守閣


  


 名古屋城天守閣の木造再建の是非などについて話し合う「名古屋城の将来を語る市民大討論会」が19日、名古屋市三の丸の市公館で行われた。

 会場からは「名古屋の誇りとして再建してほしい」と声が上がる一方、市は更地に木造で再建した場合、342億円の建設費がかかるとの試算を初めて示すなど、実現には課題も山積していることが明らかになった。

 討論会は、木造再建に意欲を見せる河村たかし市長の意向を受けて開かれ、市長や有識者、事前に傍聴を申し込んだ市民ら約160人が参加した。

 市は冒頭、焼失前の天守閣を記録した実測図に忠実な再建を想定し、昨年度に行った調査結果を発表。復元には、一般的な木造家屋200軒分に当たる4900立方メートルの木材が必要で、工事には12年間かかるとした。また、現在ある鉄筋コンクリート製の天守閣は、市民からの寄付2億円を含む6億4000万円を投じて1959年に建設されたものであることを説明した。

 建築学や観光学を専門とする大学教授ら6人によるパネルディスカッションでは、「再建に使えるような大径木(直径60センチ以上)が市場には出回っていない」「観光を考えるなら耐震化やバリアフリーについて検討することが必須」といった意見が出た。

 会場の市民からは、「世界遺産になるのも夢ではない」と復元に賛成する意見がある一方、「多額の資金がかかる上、課題が多すぎる」と反対する声も上がっていた。

 市民経済局によると、新年度予算では、現存する天守閣の耐震化などを前提とした整備課題調査費用として1000万円が盛り込まれているが、木造再建に向けた具体的な調査費は計上されていない。


(2012年2月20日   読売新聞)http://www.yomiuri.co.jp/homeguide/news/
              20120220-OYT8T00491.htm?from=yoltop